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脳の部位にあわせた脳のはたらきについて

参考文献
①松澤正著.理学療法評価学 第2版.金原出版株式会社.pp216-224
②前田真治著 福井国彦監修.老人のリハビリテーション 第7版.医学書院.pp103-120

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上は高次脳機能障害で大脳を前後左右にわけてそれぞれの部位における特徴的とされる高次脳機能障害を示している。(それらの障害の局在性は絶対的なものではない)


今回は脳機能についてブロードマンの分野と対応させて説明します。

ちなみに、ブロードマンとはウィキペディアより


ブロードマンの脳地図(ぶろーどまんののうちず)
コルビニアン・ブロードマンによる大脳新皮質の解剖学・細胞構築学的区分の通称である。ブロードマンの原典では大脳皮質組織の神経細胞を染色して可視化し、組織構造が均一である部分をひとまとまりと区分して1から52までの番号をふっている。ブロードマンの脳地図は様々な種で作られており、種が違えば同じ番号の領野であっても同質の構造であるとは限らない。




①前頭葉
4野(運動野)
6野(運動前野)
6~8野にかけて(補足運動野)
8野前方~9,10,11,12野(前頭前野)
作業記憶(46野)

②頭頂葉
3,1,2野(第1次体性感覚中枢)
43野(第1次味覚皮質)
5,7,40野(頭頂連合野)
7野の中心部の溝(頭頂間溝)
7野
39,40野(角回、縁上回)

③後頭葉
17野(第1次視覚中枢)
18,19野(第2次視覚連合中枢)

④側頭葉
41,42野(ヘッシュル回:第1次聴覚中枢)
22,21野(聴覚連合野)
20野(側頭葉下端)
38野(側頭葉極)
26野(海馬回)

などがあります。
くわしい機能については詳しく……




①前頭葉
4野(運動野)
中心前回、運動野などといわれ運動線維である錐体路の出発点です。
よく身体部位をわけて支配領域がしめされている運動野の機能局在があります(下図)
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内側面が足、上方に向かって下腿、大腿となり、内側の上方角が股関節付近、外側になるにしたがって体幹、肩、上腕、前腕、小指から親指へ、上部顔面から口、舌、のどへと分布している。

ここが障害されると痙性麻痺になることが少なく弛緩性麻痺になり腱反射低下がおこる。バビンスキー反射陽性もみられる。

6野(運動前野)
運動野に送る運動のプログラムをすると言われている。
障害すると手指失行(指先の巧緻動作が困難になる)や頬顔面失行(検者の指示に応じて笑い顔を作ったり、しかめたりすることができない)がおこるといわれる。
また複数の脳機能が障害されると巧緻動作、協調動作、熟練動作の新たな学習が困難となる

6~8野にかけて(補足運動野)
運動や感情を開始させるか、止めるかなど、運動・感情のスイッチのON-OFFの働きがある。
そのため運動開始困難や運動維持困難が生じる。

8野前方~9,10,11,12野(前頭前野)
前頭前野は単独で損傷されても症状がでない場合などもあるといわれているため、前頭前野の機能についてはさまざまな説がいわれている。
そのため、前頭前野が障害されると前頭前野症候群がおこるとされており、その症状から機能を推察していただければと思います。

[前頭前野症候群]
①感情変化
②発動性障害
③知能障害…注意障害や記憶障害
④行動障害
実行機能、管理者・管理機能の障害、まとめることができない
環境依存する行動がうまくできない
記憶に依存する行動、刺激があっても全然関係なく行動する
⑤実行障害症状
行動の目標設定 goal formulation
計画 planning
計画の実行 carrying out goal-directed plan
効果的作業 effective pertormance


前頭前野は 単一の刺激では動かないが2種類の刺激が同時に働くと動く神経があるように多くの複雑な要素をもつものの中からある複雑な条件に適合するものを選ぶときなどに関与しているものといわれる。


ほかに関連する症候群として環境依存症候群がある
症状としては主に、
①模倣行動(模倣せよという指示がないにも関わらず模倣してしまう。)
②利用行動
がある。

例:
ベッドにいくと自分の部屋ではないので寝る。
雨が降っていなくても庭を掃除する。
何度も同じ行動を繰り返す(前頭葉型認知症の方に多い症状)
がそれぞれあります。


作業記憶(46野)
言語理解、学習、推理など複雑な認知作業に必要な情報の一時貯蔵およびこれらの情報の処理を担当する大脳システムを考え、その時の作業する記憶をさしてBaddeleyらは作業記憶の概念を提唱した。
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作業記憶は視覚や聴覚的データをしばらく記憶をとどめておき環境や文脈や長期記憶など様々なものを活用しながら作業や課題の遂行を行う間働くものです。
short-term memory は単に短時間記憶をするのみの記憶であるが、working memoryはためて判断するということで違いがある。

他に、半側空間無視などに関与する帯状回(24,32野)や、ブローカ領域が関与して言語障害に関連する中心前回下部皮質下と44,45野(第3前頭回弁蓋部)
も存在する。


②頭頂葉
3,1,2野(第1次体性感覚中枢)
表在感覚、深部感覚の一般性体性感覚識別を行う。
具体的には、対象物間の類似や相違の認識、強さの異なる刺激の認識などを行う。
視床よりの感覚情報の投射を受ける。

43野(第1次味覚皮質)
両側性に障害された場合に味覚障害が生じる。

5,7,40野(頭頂連合野)
体性感覚の0.5~1.0秒以内の短期記憶
この部位の損傷では失行・失認の障害が出現する。

7野の中心部の溝(頭頂間溝)
第8脳神経である前庭神経の情報を受ける。
平行感覚と構成能力の統合を行い、障害される(左半球で多い)と純粋失語が生じることがある。

7野
選択的注意集中に関与する。
騒音のなかで人と話ができる。地図上の地点の記憶・記名しておく(地誌失認)などに働く。

39,40野(角回、縁上回)
右半球障害では視空間認知障害、左半球障害では文章の理解、統文能力の低下がおこり
両側性障害では失計算やゲルストマン症候群などがおこるとされる。


③後頭葉
17野(第1次視覚中枢)
右視野は左脳に、左視野は右脳に入る

同名性半盲
17野内側-周辺視野
17野後方-中心視野
鳥距溝上方:下方視野
鳥距溝下方:上方視野 
内側の有線野(線条野)-瞳孔毛様体の調節

18,19野(第2次視覚連合中枢)
視覚の一次記憶中枢(数秒以内の短期記憶)
視覚像の認識:障害されることにより視覚失認が生じる。

視覚失認について
失認が視覚的対象に生じたもので、聴覚や視覚を通せば認識できる。障害されるのは対象の形からの認識のみであり、動きなどの視覚情報からは認識できる。視野には対応していない。

視覚型:明暗(輝度)、色彩、運動、面積などの感覚は正常であるが形態はわからない。模写不能
統合型:まとめ上げた部分的形態を1つの対象全体の形と結び付けられない。模写はゆっくり
連合型:視覚情報と意味を結び付けられない。模写正常
対象が物体なら物体失認、顔なら相貌失認、風景なら地誌的記憶障害、文字なら純粋失読となる。



④側頭葉
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41,42野(ヘッシュル回:第1次聴覚中枢)
・純粋語聾:聴覚的語音把握の選択的障害(聴覚的言語了解、復唱、書取の障害以外には言語症状はほとんどなし。)
・皮質聾:側頭葉損傷にもとづく障害(音に関する感度の障害という意味)
音の大小。高低。
41野前部:高音部、41野後部:低音部

22,21野(聴覚連合野)
感覚性失語(左半球:ウェルニッケ失語)自発語は流ちょう、錯語(字性・語性)が多い。復唱・理解不良、時としてジャーゴンとなる。
聴覚失認:両側性の22野、21野の一部の障害
環境音・音楽の認知障害
失リズム(右半球)

20野(側頭葉下端)
側頭、後頭、頭頂葉への連合野からの情報を辺縁系へ送る機能の障害。
現在生じている現象と過去の記憶との統合を行う。

38野(側頭葉極)
デジャブやジャメヴ(昔から何度も来ているところ、あるいは自分の住んでいるところも初めてのように感じる)などがおこる部位といわれる。

26野(海馬回)
地誌的記憶障害:写真を見て実際に見えている場所と統合できるが、その場所が何かじゃわからない。
地理的な方向と場所はわかるが以前にもっていた地理的な記憶と照合できないための地誌的な障害


といわれています。


長文ですが読んでいただきありがとうございました。
by kentarou591124 | 2010-12-23 20:50 | 文献・自己学習


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